
「そろそろ外壁塗装かな…」
築10年を過ぎたあたりから、多くの方がそう考え始めます。
ですが、ここで一つお伝えしたいことがあります。
外壁塗装は、「どの家も同じ工事内容」ではないということ。
同じ”外壁塗装”という言葉でくくられていても、あなたの家の外壁がモルタルなのかサイディングなのかで、工事の中身も、見るべきポイントも、費用の内訳も、まったく違ってくるんです。
そしてこの違いを知らずに業者選びをしてしまうと、「安いから」で選んだ工事が、数年後に雨漏りを招く——そんなケースを現場では本当によく見てきました。
この記事では、現役で外装リフォームの営業をしている私の視点から、
- モルタル外壁とサイディング外壁の”本質的な違い”
- 塗装工事で”絶対に外してはいけないポイント”
- 30坪の家を例にした”リアルな費用感”
- 見積書でチェックすべき”たった1行”
これらを、一般の持ち家オーナーさんにもわかりやすくお伝えしていきます。
「うちの外壁、どっちなのかわからない」という方も大丈夫。読み終わるころには、ご自宅の外壁タイプと、必要な塗装の考え方が見えてくるはずです。
🏠 そもそもモルタル外壁とサイディング外壁って何が違うの?
まずは基本から。この章を読めば、ご自宅の外壁がどちらか、パッと見分けられるようになります。
モルタル外壁とは
モルタル外壁は、セメント・砂・水を混ぜた材料を、職人が現場で塗り上げて仕上げる外壁です。
特徴は、なんといっても継ぎ目(目地)がない一体感のある見た目。職人の手仕事による独特の風合いがあり、昔ながらの日本家屋や、デザインにこだわった住宅でよく使われてきました。
一方で、素材自体の防水性は高くないため、表面の塗装が「防水の生命線」になります。そして、乾燥や揺れの影響でひび割れ(クラック)が発生しやすいというのが最大の特徴です。

サイディング外壁とは
サイディング外壁は、工場で作られた板状の外壁材(サイディングボード)を、壁に張り付けて仕上げる工法です。
現在の戸建て住宅の約8〜9割で採用されている、いわば”現代の主流”。 デザインの種類が豊富で、品質が安定しており、工期も短く済むのが魅力です。
ただし、ボードとボードの継ぎ目には「シーリング」と呼ばれるゴム状の充填材が入っており、このシーリングの劣化がメンテナンスの最大のポイントになります。

うちの外壁はどっち?見分け方のコツ
外から見て、こんな特徴があれば参考にしてください。
- 壁に縦や横の”線(継ぎ目)”が規則的に入っている → サイディングの可能性が高い
- 壁全体がつるっとしていて継ぎ目がない、または凹凸のある塗り壁の質感 → モルタルの可能性が高い
- 表面がザラザラ、砂状の質感(リシン・スタッコ仕上げ)→ モルタルの一種
「それでもよくわからない…」という方は、外壁をじっくり観察して、2〜3m間隔くらいで規則的な線が走っていたらサイディング、と覚えておくとほぼ外れません。

📊 【比較表】モルタル vs サイディング、ひと目でわかる違い
ここで、両者の違いをまとめた比較表をご覧ください。 あとの章で一つずつ詳しく解説していきますが、まずは全体像をつかんでおきましょう。
| 比較項目 | 🏠 モルタル外壁 | 🧱 サイディング外壁(窯業系) |
|---|---|---|
| 見た目の特徴 | 継ぎ目のない一体感 職人の手仕事による風合い | 板状ボードのつなぎ目あり 豊富なデザイン・柄 |
| 代表的な劣化症状 | ヘアークラック/構造クラック チョーキング/コケ・藻 塗膜の浮き・剥がれ | 目地のシーリング劣化 ボードの反り・浮き チョーキング/塗膜の剥がれ |
| 一番の弱点 | ひび割れ(クラック) | 目地のシーリング劣化 |
| 塗装時の最重要ポイント | クラック補修 | シーリング打ち替え |
| おすすめ塗料タイプ | 弾性塗料 | シリコン/フッ素/無機系 |
| 費用感(30坪目安) | 約80〜130万円 | 約90〜150万円 |
| メンテナンス周期 | 塗装:約10〜15年 | 塗装:約10〜15年 シーリング:約8〜10年 |
| 見積書で注意すべき点 | クラック補修の有無・範囲 | 打ち替えか増し打ちか |
一つずつ、中身を見ていきます。
🔧 塗装工事の中身はここが違う|外壁材で変わる”下地処理”の重点
外壁塗装は「塗る」作業だけで成り立っているわけではありません。 むしろ、仕上がりの良し悪しを決めるのは塗る前の”下地処理”です。そしてその下地処理の内容こそ、モルタルとサイディングで大きく変わります。
モルタル外壁は「ひび割れ補修」が大前提
モルタル外壁の塗装工事で何より重要なのが、クラック(ひび割れ)補修です。
モルタルのひび割れは、大きく2種類に分かれます。
- ヘアークラック(幅0.3mm未満):髪の毛のように細いひび割れ。表面的なもので、塗装時の下塗り材(フィラー)で埋めれば問題ないケースが多い
- 構造クラック(幅0.3mm以上):深さもあるひび割れ。ここから雨水が浸入する可能性があるため、Vカット・Uカットでひびを広げてシーリング材を充填する本格的な補修が必要
「ひび割れを甘く見て、上から塗料で塗り潰すだけ」の業者も残念ながら存在します。ですが、それでは数年以内にひびが再発し、塗膜の下で雨水がじわじわ侵入——ということになりかねません。
モルタル外壁では、塗装の仕上がり以前に、クラック補修の丁寧さがすべてを決めると言っても過言ではないんです。

サイディング外壁は「シーリング打ち替え」が大前提
一方、サイディング外壁の塗装工事で絶対に外せないのが、目地のシーリング補修です。
サイディングはボードを張り合わせて作られているため、ボードとボードの間に必ずシーリング材が充填されています。このシーリングが紫外線や雨風で劣化すると、硬化・ひび割れ・剥離が起こり、そこから雨水が壁の内部へ侵入してしまいます。
ここで重要なのが、シーリング工事には2つの方法があるということ。
- 打ち替え:既存の古いシーリング材を完全に撤去してから、新しいシーリング材を充填する。本来あるべき工法。
- 増し打ち:古いシーリングの上に、新しいシーリング材を重ねて打つ。安いが、下の劣化シーリングはそのまま残るため、耐久性は落ちる。
見積書に「増し打ち」と書かれていたら要注意。サッシまわりなど一部例外を除き、基本は「打ち替え」が原則です。

シーリング工事の細かい話は、以前書いた
👉【特別編】外壁塗装のシーリング打ち替えとは? で深掘りしていますので、あわせてどうぞ。
同じ”塗装”でも、見るべきポイントがこれだけ違う
まとめるとこうなります。
- モルタル → クラック補修の質がすべて
- サイディング → シーリング打ち替えの質がすべて
この2つのポイントを押さえられない業者は、正直な話、どれだけ高級な塗料を使ってもダメです。 逆に、ここさえしっかりできていれば、塗装工事の8割は成功したようなものなんです。
なお、塗料のグレード選びについては、別記事の
👉塗料の種類とグレードの違いとは?で詳しく解説しています。
🔍 劣化症状の出方も違う|見逃したくない”うちの外壁”のサイン
「じゃあ、うちの外壁ってそろそろ塗装が必要なのかな?」 ——ここからは、実際に現れる劣化症状をチェックしていきましょう。
モルタル外壁で出やすい劣化症状
| 症状 | 危険度 | 解説 |
|---|---|---|
| ヘアークラック | ⭐(経過観察) | 幅0.3mm未満の細いひび。すぐに問題にはならないが、放置すると広がる可能性 |
| 構造クラック | ⭐⭐⭐(要対応) | 幅0.3mm以上の深いひび。雨水侵入の直接原因 |
| チョーキング | ⭐⭐(要メンテ) | 壁を触ると白い粉が付く。塗膜の防水機能が失われたサイン |
| コケ・藻の発生 | ⭐⭐(要メンテ) | 防水性低下で水分が滞留している証拠 |
| 塗膜の浮き・剥がれ | ⭐⭐⭐(早急対応) | 塗装と下地の密着力が失われている状態 |
特に注意したいのは構造クラック。幅0.3mmを超えるひび割れを見つけたら、塗装の時期が来ていると考えてください。

サイディング外壁で出やすい劣化症状
| 症状 | 危険度 | 解説 |
|---|---|---|
| 目地のひび割れ・剥離 | ⭐⭐⭐(要対応) | シーリングの劣化。雨水侵入の最大原因 |
| ボードの反り・浮き | ⭐⭐⭐(要対応) | 吸水と乾燥の繰り返しで変形。放置すると割れにつながる |
| チョーキング | ⭐⭐(要メンテ) | モルタル同様、塗膜劣化のサイン |
| 塗膜の剥がれ | ⭐⭐⭐(早急対応) | ボードの防水性が失われる |
| カビ・苔 | ⭐⭐(要メンテ) | 防水性低下のサイン |
サイディングで特に気をつけたいのは、ボードの反り。これはサイディング特有の症状で、一度反ってしまうと元には戻らず、部分張り替えが必要になることもあります。

“白い粉”だけで判断しないほうがいい理由
チョーキング現象(壁を触ると白い粉が付く)は、モルタルでもサイディングでも起こる、塗装劣化の代表的サインです。
ただし、チョーキングだけを見て「塗装時期です!」と判断するのは早計。
モルタルの場合は、チョーキングの奥にクラックが潜んでいる可能性があり、 サイディングの場合は、同時に目地のシーリング劣化が進んでいる可能性が高いです。
つまり、チョーキングは”入り口のサイン”にすぎません。 本当に見るべきは、外壁材ごとの”弱点”が劣化していないか——この視点が、素人でも業者に騙されないための大事な考え方です。
💰 気になる費用の話|30坪の家で比較してみた
ここからは、現実的な費用感の話をしていきます。 一般的な30坪(延床面積100㎡前後/外壁面積150〜180㎡)の戸建て住宅を例に、おおよその相場を見ていきましょう。
モルタル外壁|30坪の費用目安
総額:約80〜130万円
内訳のイメージは以下のとおりです。
| 項目 | 目安費用 |
|---|---|
| 足場設置 | 15〜30万円 |
| 高圧洗浄 | 2〜3万円 |
| 養生 | 2〜4万円 |
| クラック補修 | 3〜15万円(※補修量で変動大) |
| 下塗り(フィラー) | 8〜12万円 |
| 中塗り・上塗り | 25〜50万円(塗料グレードによる) |
| 付帯部塗装 | 10〜20万円 |
| 諸経費 | 5〜10万円 |
モルタルで費用が変わる最大要因は、クラック補修の量です。 ヘアークラックだけなら下塗り材で対応可能ですが、構造クラックが何本も走っている家では、Vカット補修だけで10万円以上かかることも珍しくありません。
サイディング外壁|30坪の費用目安
総額:約90〜150万円
| 項目 | 目安費用 |
|---|---|
| 足場設置 | 15〜30万円 |
| 高圧洗浄 | 2〜3万円 |
| 養生 | 2〜4万円 |
| シーリング打ち替え | 15〜30万円(※家の目地の総延長による) |
| 下塗り | 8〜12万円 |
| 中塗り・上塗り | 25〜50万円 |
| 付帯部塗装 | 10〜20万円 |
| 諸経費 | 5〜10万円 |
サイディングで費用が変わる最大要因は、シーリング工事です。 目地の総延長が長い家(凹凸の多いデザインなど)ほど、シーリングの材料費と施工費がかさみます。
なぜサイディングのほうが高くなる傾向にあるのか
見比べてみるとわかりますが、サイディングはシーリング工事費が必ず乗るぶん、モルタルより10〜20万円ほど高くなる傾向があります。
ただしこれは、サイディングのほうが損な外壁という意味ではありません。 シーリング工事をきちんと行うことで、ボード本体の寿命を大きく延ばせるため、長期的には元が取れるメンテナンスなんです。
むしろ、「サイディングの塗装なのにシーリング工事が含まれていない見積もり」は、一見安く見えても後悔の元。ここを削った業者は、正直おすすめできません。
塗装の相場感そのものについては
👉外壁塗装・屋根塗装の相場はいくら? もあわせてご覧ください。
🗓 メンテナンス周期の違い|”塗装10年”の罠
「外壁塗装は10年ごと」とよく言われます。 これは大きな間違いではないのですが、サイディング外壁ではもう一つ、気にすべき周期があることを知っておいてください。
モルタル外壁のメンテナンス周期
- 塗装:約10〜15年ごと
- ひび割れが見つかったら、その都度補修
モルタルは基本的に塗装のサイクルで管理するシンプルな外壁です。 ただし、ひび割れは塗装時期に関係なく発生するため、日頃の観察が大切になります。
サイディング外壁のメンテナンス周期
- 塗装:約10〜15年ごと
- シーリング:約8〜10年ごと ← ここが重要
サイディングの落とし穴は、塗装とシーリングの寿命がズレていること。
塗装が10年もつ塗料を使っても、シーリングは8年ほどで劣化するため、次の塗装タイミングまで待っているとシーリングが先にダメになっているケースがあります。
これを防ぐために、塗装のタイミングでシーリングも必ず打ち替えるというのが基本方針になります。
放置した場合に起こること
「まだ大丈夫」「次の塗装までもつはず」——こう考えて劣化を放置した結果、現場でよく見るトラブルがこちらです。
- モルタル:クラックから雨水が侵入 → 内部の木材が腐食 → 最悪、張り替え(200万円超)に発展
- サイディング:シーリング劣化から雨水侵入 → ボードが反る・割れる → 部分張り替えが必要に
塗装を10年サイクルで行うのは、見た目のためではなく、こうした”大きな修繕”を防ぐためなんです。

📋 見積もりを比較するときに”必ず見るべき”ポイント
ここからは、現役営業としてぜひ知っておいていただきたい、見積書のチェックポイントをお伝えします。
複数業者から相見積もりを取るのは非常に良いことです。ですが、安い見積もりが本当に「お得」とは限らない——ここに落とし穴があります。
共通のチェックポイント(モルタル・サイディング共通)
✅ 足場費用が明記されているか → 「サービス」「無料」は原則ありえません。必ず一式で20〜30万円程度かかります
✅ 塗料メーカー・製品名・グレードが書かれているか → 「シリコン塗料」だけではNG。「日本ペイント ファインシリコンフレッシュ」のように具体名があるか
✅ 塗布回数(3回塗り)が明記されているか → 下塗り・中塗り・上塗りの3工程が基本。工程が省略されていないか
✅ 付帯部(軒天・破風・雨どい等)の塗装範囲 → 「建物一式」ではなく、どこを塗るか具体的に書かれているか
モルタル外壁ならではのチェックポイント
✅ クラック補修の記載があるか 見積書に「クラック補修」「ひび割れ補修」の項目があるか確認してください。記載がない、または「下地処理一式」とだけ書かれている場合は、具体的な補修方法を質問しましょう。
✅ 補修方法が明記されているか 「Vカット工法」「Uカット工法」「シーリング充填」など、具体的な工法名があると安心です。
サイディング外壁ならではのチェックポイント
✅ 「打ち替え」か「増し打ち」か、明記されているか この1行で、工事の質が大きく変わります。原則は打ち替え。「増し打ち」となっていたら、なぜ増し打ちなのか理由を確認してください。
✅ シーリング材のメーカー・製品名があるか シーリング材にも耐用年数の長い高耐久タイプ(オートンイクシードなど)があります。具体名が書かれているほうが信頼できます。
✅ 目地の総延長(m単価)が記載されているか 「シーリング工事一式」だけではなく、「〇m × 単価」で計算されているかを確認しましょう。
こんな見積もりは要注意
- 「一式」ばかりで項目の詳細がない
- 他社より極端に安い(相場より20%以上安いときは特に注意)
- 塗料名・メーカー名が書かれていない
- 「今日契約してくれれば○万円引き」と急かしてくる
- クラック補修やシーリング工事の内容が曖昧
特に最後の「急かしてくる業者」は、別記事でも取り上げた悪質業者の典型的な手口です。優良業者は絶対に契約を急かしません。
見積書の詳しい見方は、
👉外壁塗装・屋根塗装の見積もりで絶対チェックすべき5つのポイント と、
👉塗装の見積もりが安すぎる理由とは? もぜひ参考にしてください。
現場調査でよく聞かれるのが「他社の見積書を見てほしい」というご相談。その9割以上で、シーリングやクラック補修が”一式”と書かれているだけの曖昧なものです。一式の中身を質問すると答えられない営業も多く、工事品質に直結する部分だからこそ、必ず具体的に書いてもらうべきだと感じています。
✅ まとめ|あなたの家に合ったメンテナンスが、いちばんの正解
長くなりましたが、最後にポイントをまとめます。
🏠 モルタル外壁は「ひび割れ補修」が命
- クラックの種類と補修方法を理解することが大切
- 構造クラックは必ず本格補修を
- 弾性塗料でひび割れに追従させる選択肢も
🧱 サイディング外壁は「シーリング打ち替え」が命
- 増し打ちではなく打ち替えが原則
- 塗装より先にシーリングが劣化することを理解しておく
- 目地の総延長で費用が変わる
💰 30坪で費用の目安は
- モルタル:約80〜130万円(クラック補修量で変動)
- サイディング:約90〜150万円(シーリング工事分が上乗せ)
📋 見積もりは”安さ”より”項目の具体性”で判断
- 「一式」だらけの見積もりは危険信号
- クラック補修・シーリング工事の内容が明記されているか
- 塗料・シーリング材のメーカー名が書かれているか
外壁塗装は、家を守るための大きな投資です。 「どの業者も同じようなもの」——そう思って価格だけで選んでしまうと、数年後に”安物買いの銭失い”になりかねません。
大切なのは、ご自宅の外壁材の特徴を理解したうえで、その弱点にしっかり対応してくれる業者を選ぶこと。
この記事を読み終えた今、あなたは
- 自宅の外壁がモルタルかサイディングか見分けられる
- それぞれの”弱点”と、塗装で重視すべきポイントがわかる
- 見積書を見たときに、優良業者か判断できる
——そんな状態になっているはずです。
外壁塗装は一生のうちに何度もある工事ではありません。 だからこそ、正しい知識を持って、納得のいく業者を選んでいただきたい。それが、現場で数多くのお客様と向き合ってきた私からの一番のメッセージです。
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よく聞くチョーキング現象とは?大事な塗装時期のサインの一つです。ただすぐに塗装をしなければいけないのか。そんな疑問について徹底解説します。


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